月夜に私は攫われる。


『その内届けてくれるだろうから、もう少し待ってみたら?』

『わ、かりました。ありがとうございます』





そうしてお礼を告げて、一人帰り道を歩いている今。

不安な考えが頭の中をぐるぐると回っていた。


もしその男子が無類の本好きで、あの本を読みたくなって返してくれなかったらどうしよう...、なんてありえない妄想をしてしまう。


司書さんには分かったと伝えても、本が手元に無い限りはまだ安心出来ない。


きっと昼休みにギリギリまで図書室に居れるのだから一年生だろう。

いっその事こっちから探しに行こうかな、いやでも、私はそのイケメン(らしい)の名前知らないし....。


ああもうどうしよおぉーと心の中で半泣きになって、暫くするとだんだん頭が冷えてきた。

悲愴な表情から一転、スン、と真顔になる。

何を言っても本はまだ戻ってこないから、今の状況が何だかアホらしく思えてきたのだ。



.......まあ嘆いても仕方ない。やっぱり司書さんの言う通り、取り敢えず待ってみよう。


私はポジティブに考えることにした。
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