月夜に私は攫われる。
「何するんだよ、仁愛ちゃん!」
.........仁愛ちゃん
誰にでも呼び捨てにする千秋は、仁愛にだけちゃん付けして呼ぶ。
そして口調も野生っ気が無くなる。
とても同一人物とは思えない口調に、ブフォ、と吹き出してしまった。
さっきとキャラ違いすぎるでしょ....と突っ込みなくはなるが、実はちゃんとした理由があったりする。
「アンタ次同じ事やったら承知しないんだからね!?」
「わ、分かったから、もうしないから....ちょっと離れて....」
ずいずいと睨みながら迫り寄る仁愛に、慌て顔をしながら限界まで顔を背ける千秋。
ーーその耳はトマトなんて目じゃないくらいに真っ赤だ。
仁愛とのやり取りを見たクラスメイト達からは、いつものやつだ、と生暖かい空気が漂って来た。