月夜に私は攫われる。

「いやあモテモテだねえ」と仁愛を突っつくと。

頬を膨らませて何かを言われた気がした。
だけどか細いソプラノは野太い悲鳴とタイミング悪く重なって。

「ごめん何か言った?」と聞くと。

「な、なんでもない!」と顔を逸らされてしまった。.....いささか謎である。





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「椿だってそこらの男子よりずっとカッコいいのに.....」という拗ねたように言う仁愛の呟きは、ざわめきにかき消されて私に届くことはなかった。



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