月夜に私は攫われる。
そのまま続く流れるような不穏すぎる宣言に、咄嗟に俯いていた顔を上げた。
.....そういうわけで、ってどういう訳だ。
.....あとそれって私に拒否権なくない!?
「待って....それじゃあ私の気持ちはどうなる...っ!!」
ブレザー越しに手首を強く握られ思わず顔を顰める。そのまま強引に引き寄せられたかと思えば、背中に硬いものがドンッ、と当たった。
それが壁だと気付いた頃には、頭の両横側を腕で囲まれ私は完全に逃げられなくなっていた。
背筋が凍りそうなほどの美貌と至近距離で目が合う。
「しー。俺が聞きたいのは先輩のキモチじゃないです。ただ頷いてくれれば良いんですよ」
艶を含んだ声で悪い子供を諭すように囁かれる。