月夜に私は攫われる。
そう言って視線を教室の奥、後ろ側に向ける。


つられるように視線をたどると、何人かの女の子に囲まれている男子がいた。


本人は頬杖をついて窓の外を見ていて、女子達を気にも留めていない様子だ。


...うわあ、確かにちょっと格好良いかも....。


格好良いというより、綺麗だとか神々しいと言った方が適切かもしれない。


遠目だが、きちんと伸びた背筋や長い手足がよく分かる。線が細い、儚げな雰囲気だ。


他の男子には申し訳ないが、放課後教室に残っていて第一印象イケメンだから、多分彼だろう。


私は後輩ちゃんに頷くと、後輩ちゃんはじゃあ声掛けますねと告げてその男子の元に背を向けて行ってしまった。
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