月夜に私は攫われる。
後輩ちゃんは女の子達の間を掻き分けると、イケメンくん──もとい浅霧くんに何やら話しかける。
「ねえ椿、この後どこ行く?」
横から仁愛が私のブレザーの袖を引っ張った。
そうだなあと答えようと視線を仁愛に向けたその時。
突然ガッタンッッと椅子が倒れる音が教室のざわめきを掻き消した。
一瞬、全ての音が消える教室内。
え、何事???
見れば浅霧くんが呆然とした顔でこちらを見て立っていた。やっぱり背はすらりとしていて高い。