月夜に私は攫われる。
「ちょっと!!椿はこの後わたしと帰るの!!」
脳がフリーズして動けない私の代わりに仁愛が反論する。
浅霧くんは仁愛を一瞥すると私を見て、友達ですか?と尋ねてきた。
.....ごめん質問の意図が分からん。
「もちろん友達です」
とりあえず回らない頭で力強く頷いた。
私の返事に浅霧くんは一瞬考える素振りを見せると、怖いくらいの無表情で、ちょっとだけ沢野さん借りますねと仁愛に告げて私の腕を掴んだ。
周囲の女の子達がキャ〜と歓声を上げる。
浅霧くんは私を引っ張ったまま早足で歩き出す。
え、これどこ行こうとしてるの???
この場じゃ駄目な感じ...??
いやでもとにかく本を返して貰わないとっ....!!
後ろを振り返って、顔を真っ赤にして体をブルブルと震わせている仁愛に叫ぶ。
「ごめん仁愛!!すぐ行くから教室で待ってて!!」
「はぁ!?ちょっと椿!?.....あんた、わたしの椿に何かしたら許さないんだから...!!」
浅霧くんをビシッと音が付きそうな勢いで指さして、格好良いセリフを吐く仁愛。
.....仁愛さん。ありがたいけど、こんなイケメンが私に何かするわけないじゃん。