月夜に私は攫われる。
──そんなこんなで、浅霧くんに腕を引かれて来たのは、なんと空き教室。
この学校はそこそこ広いから教室も多いけど、使われない教室には基本鍵が掛かっているはずだ。
「あの、ここ、どうやって...」
まずい。初対面の男子と、しかも目が潰れそうなほどの美男子と二人きりなんて今まで無かったから、どうしても言動がぎこちなくなってしまう。
しかし浅霧くんはちゃんと聞きたいことを分かってくれたらしく、これですか?と右手に握る鍵に目線を落とした。
「職員室からパクってきました」
「ええっ!?それ駄目じゃんってかどうやって!?いや逆に凄くない!?」
とんでも発言に思わず敬語を無くして突っ込んでしまった。
.....いや、後輩だし、別に敬語じゃなくてもいいか。
浅霧くんはしれっとしていたが、暫くするとふ、と表情を和らげた。
「冗談です。ちゃんと先生に借りましたよ」
「え、冗談だったの!?」