月夜に私は攫われる。
「え!?浅霧くんも好きなの!?」


衝撃だった。この本を読んでいる人を周りで見かけたことが無かったから。


「もしかして、それを話したくてわざわざ教室を移したの?」

「はい。先輩と、話してみたくて」

「っ!!」


揶揄うつもりで聞いてみたのに、花が咲くような満面の笑顔で肯定されると言葉に詰まる。

やだめっちゃいい人....!
感動のあまり心が洗われるようだ。

しかしそんな私の心情とは一転、浅霧くんは急に真剣な顔つきになる。


「あの、沢野先輩。明日から毎日、放課後俺と会ってくれませんか?」

「わ、私が!?えーと...」


突然すぎないですかね!?

どうしよう...。仁愛と帰るから流石に毎日は無理っぽいし....。

今日みたいに仁愛を待たせるのは申し訳ない。

私は帰宅部を貫いているから、仁愛が部活の日は大丈夫なんだけど。

毎日はごめんなさいと言おうと口を開いたその時。


「すいません先輩。無理にとは言いません。俺も急すぎたって思ってるので。....あ、でも───
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