月夜に私は攫われる。
せっかく気の合う人が出来たのに話せなかったら、俺寂しくて.....この写真、四六時中眺めてるかもしれません」
眉を下げて見せてきたスマホには、本棚に貼ってある見事な読書感想画の作品達と、その少し左横に私が映っていた。
しかもただ映っているだけじゃない。私が破れた本を発見した時の写真で、タイミングが悪いせいか、まるで私が破いているかのように見えてしまっているというミラクルショット。
.....なんてことだ...。いつ撮られたんだろうこんな写真。
浅霧くんはまるで私の心を読んだみたいに、
──俺もよく図書室にいるんです。昨日写真のフォルダを漁ってたらたまたま出てきて....
と照れたようにのたまう。
なぜそこで照れるっ......!?いやいや待て待て待て。
「す、スマホは授業中は使用禁止なんじゃ.....」
「....はい。だから、没収した先生に見られてしまうかもしれませんね」
そうしたら....沢野先輩どうなるんでしょうね、と。
実に無邪気な美しい笑みで言い切られる。
私の中で浅霧くんの印象がガラガラと崩れていく音がした。
有無を言わせぬ雰囲気に、私はヒッ、と青ざめて無実の罪で賠償金を払う自分を想像する。
......初対面で脅すか普通っ!?
でもこんなのを見られたら、私の充実した図書委員生活が終わってしまう....。いや私は本を破ったりなんかしてないけれど。
「どうします?」
浅霧くんが笑顔のまま返事を促す。その目は笑ってなかった。
いい人っていうの、前言撤回。
悪魔だ....。ここに悪魔がいる....。
私に選択肢なんて初めから無かったらしい。ああ、仁愛になんて言えばいいんだ....。
私は震える唇をゆっくりと開いた。
「......毎日、会いに、行きます」
浅霧くんは頬を染めて眩しいほどに微笑んだまま、言ってのけるのだ。
「良かったぁー。俺嬉しいです....。約束ですよ、沢野先輩?」
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