月夜に私は攫われる。
「ち、千秋がわたしと一緒に帰りたいって.....?」
「ウンそう、そんな感じで言ってた」
うるうると濡れた大きな目を上目遣いにして尋ねられる。
恋する乙女の表情に、私は罪悪感で押し潰されそうだった。
嘘ですごめんなさい。あの仁愛に対してだけヘタレな千秋が頼んで来るなんて天地がひっくり返っても無いだろう。
でも私にも人質、いや写真質があるから許してほしい。
「ふふ、それなら一緒に帰ってあげてもいいかな」
「千秋喜びそう。私から返事しとくよ」
「椿は、わたしが千秋と帰っても平気?」
「もちろん!私は仁愛の恋を応援したいから」
力強く拳を握ると、うん...ありがと、とか細い声で返事をされた。
.....ああ、後で千秋にメールしなくちゃ。