月夜に私は攫われる。
......文章はたどたどしくて、少し拙い印象だった。
他の作家さんのように語彙力があるわけでもなければ、優れた表現がされているわけでもない。
ただ、一生懸命思いを込めて書かれたのが分かる文章だった。
夢中で読んだ。その間は、苦い失恋の記憶なんて頭の片隅にも残っていなかった。
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三駅はあっという間で、付属のしおりを挟んで本を閉じる。
まだ冒頭だけど、惹かれた理由が分かったかもしれない。
──ああ、だってこんなにも。
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「私と、似てたから...かな」