月夜に私は攫われる。
浅霧くんが目を見開く。
何日も、告白しようか悩んだ。関係が壊れてしまうのが怖かった。それでもなんとか決心して勇気を出したのに、あまりにも呆気なく振られて。
先輩に見向きもされていなかったと知った私は、ポツンと置かれた一冊の本に自分を重ねたのだ。
「私、失恋したんだけどね....。でもその本を見たとき、もう忘れていいよって言われた気がしたの」
青色の表紙が、あまりにも爽やかで。まるでしがらみから解放されたみたいで。
拙いながらも、読んでくれと伝わる文章にどうしようもなく励まされた。
「だから、愛着が湧くんだよね」
固まる浅霧くんに笑いかける。
浅霧くんの耳が、心無しか赤い。
「.......ナイス、俺」
「へ、何が?」