月夜に私は攫われる。

キョトンとする私に、なんでもありませんと早口で言い切ると、浅霧くんは微笑を浮かべた。


「つまり、今の話をまとめると、先輩ってその本のお陰で好きな人を忘れられたってことですよね」

「うん??まあ....?いやまとめなのか、それは」


ニッコリ。浅霧くんは更に笑みを深めた。

綺麗なのにちょっと怖いのは気のせいだろうか。


「ちなみになんですけど、先輩の好きだった人って、どんな人ですか?」


「えええ...?うーん.....年上で、バスケが上手くて、優しいけど意地悪な感じ.....?」


尋ねられたからとはいえ自分を振った相手を褒めるのは何だか癪だが、事実なのは事実だ。
く.....仕方ないっ.....!


「顔は?」

.....やけに食い気味だな。

「顔??うーん、」

「俺より格好良いですか?」
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