俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~

「伶士、あのっ…」



(えっ…?)



次の言葉を口にしようとしたが、思わず声を喉の奥で止めてしまった。

そこにいるとは思わないものを、見てしまったからだ。



伶士の首元に、ササッと蜘蛛が這う。

黄色の縞を持った、大きい蜘蛛が…。



…その時、頭に過った。

私は、読み間違えていたのかもしれない、と。



「…早速、姿を見せたか?」



目の前には、いつの間にか。

私の視界から伶士を遮るようにして、現れていた。



ニヤリと笑う、口元。

挙げた右手には、すでに術式を掌中している。



「…コソコソしおって!人間如きが!」



長い黒髪の…女!



(…しまった!)



「…ナウマク・サンマンダ・ボダナン…マカ・ナーラ…」



取られた先手を防がねば、と意識よりも先に口が開き、指は印を結ぶ。



「…ア・ビラ・ウンケン・ソワカ!」



真言詠唱、めんどくさい。タイムロスを気にして早口になり噛みそうだ。

そう思いつつも、すぐ様印を解いて手を翳す。

術の霊圧を掌に感じながら。




「【蓮華曼陀羅陣】!」
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