俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
相手が格上だからって、怯んでいる場合ではないのだ。
弱肉強食、柔能く郷を制す。
…格上だろうが、必ず付け入る隙はどこかにあるはず。
どこの馬の骨かわからん奴に、伶士を渡すわけにはいかない…!
(親父、神力で一気に畳みかけるよ…)
力の主である親父に向けて、そう念じる。
相手は格上の『稀少種』だ。神力無しでは勝負にならない。
【絶対従者】の力を発動させる。
そう思って、親父から譲り受けた『神光』を宿らせてある左耳のピアスに触れようとした。
その時だった。
「…なっ!」
「…それは、させぬ」
左手が、動かない…?!
私の意とは逆に、左手が中途半端なところで宙に浮いたまま動きを止めている。
左手のみが、微動だに出来なくなっていたのだ。
何が…!
と、焦りを覚えていると、動かない手元がキラッと輝く。
これは先程、伶士の首の後ろで見つけた輝きと一緒であり。
奴の手にしているテグスのような、蜘蛛の糸…!
辺りを注視すると、私の左手首にはテグスの蜘蛛の糸がぐるぐると巻き付けられていて。
辿ると、そこは女の手にしている糸と繋がっていた。