俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
この女、そういうことか。伶士を盾にするために、わざと…!
なんて趣味が悪い。
伶士を盾に取られては、やむを得ず術陣を解除しかない。術陣は取っ払って、振り出しに戻る。
私の反撃を断念する様を見て、女はまた笑っていたが。
…しかし、私はこれで反撃を諦めたわけじゃない。
広域攻撃が伶士を巻き込むなら、もう単体接近戦で行くしかないか?
けど、左手を拘束されている以上、身動きが取れない。
ならば…。
「ナウマク・サンマンダ・ボダナン…アロリキャ・ソワカ…【真陀羅朱霊華】!」
拘束されていない右手に、再び橙色のベールを出現させる。
先程同様、霊力を乗せた拳を大きく振り回す。
…だが、女とその傍にいる伶士の方向ではない。
自分を拘束しているテグスの蜘蛛の糸に向かって。
先程のように蜘蛛の糸を焼き払って、左手を解放させるというのが目論見だ。
(…はっ!)
だが、その時。
気付いたら、すぐ目の前にまで近づかれていた。
(…伶士っ?!)
私の間合いに入り込んできたのは、表情を失くしたままの、伶士自身だ。