俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
「ま、待てっ!…伶士っ!」
まさか、伶士が接近してくるとは思わず、ほんの一瞬であるが、集中が削がれる。
自分の手を拘束した蜘蛛の糸を焼き払えたのはいいもの、僅か一瞬の隙で、今度は伶士の両腕が私の首元、胸ぐら辺りに伸びてきたのだ。
術を乗せた拳を、伶士に向かって振るうことが出来ない。
そうなるとなす術がなくなり、瞬く間に伶士の両腕に襟元を掴まれ、手にかかる。
ものすごい勢いで締め上げられ、あっという間に足が宙に浮いた。
「くっ…!」
まさか、自分の彼氏が自分に手を掛けて首を締め上げるなんざ…!
呼吸が詰まって、息が出来ない。
息苦しさ、更なる拘束から逃れるために、無意識に手を掛けて抵抗するが、びくともしない。
私を締め上げる伶士の背後には、女が笑い続ける。
「そう、そうよ、愛しい人…私に仇なす者は叩き潰しておくれ…」
そう言って、女は私を締め上げ続ける伶士の背中にそっと触れる。
(愛しい、人…?)
え。まさか、本当に浮気なの。
だなんて頭に過ぎるが、今は冗談まがいのことを言ってる場合ではない。