俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~

殺気溢れた咆哮をあげた後、突然現れたヨーテリは、私を拘束している伶士の両手首に、おもいっきりガブッ!と噛み付いた。

伶士の腕がピクッと反応する。

…力が弱まった!

そしてヨーテリは、再び「ワンワンワン!」と伶士に向かって吠える。

すると、伶士は無表情のまま私から片手を離し、顔を背けていた。

ヨーテリ何をした?と、考えている場合じゃない。

拘束が離れ、息を吹き返すことが出来た。この隙を逃さない手はない。

まだ片手で宙吊りにされたままだが、崩れ掛けた結界を回収するため、呼吸を整えながら印を結んで解除の呪を唱える。



「帳を放て!…急急如律令、領域解除!」



私の呪に反応して、崖崩れの音と地鳴りはピタッと止まる。

同時に、グニャリ…と、空間が捩れる。

ゆっくりと渦を巻いて捻れて、辺りの光景を徐々に取り戻していった。

結界が、解けた。

元の空間に戻された。



私の襟を掴み上げたままの伶士の手が、パッと開く。

まるで、興味が無くなり不要としたかのように、私を地に落とした。

地に転がされた私の傍には、ヨーテリがわんわんと吠えながらやってくる。
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