俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
…しかし、ここからが勝負だ。
音宮なずな、準備はいいか?
決戦の時だ。
息を呑み込んで、覚悟を決める。
緊張で暴れ出しそうな心臓を鎮めるために、右の拳でドンと叩いた。
三度、リビングの状況を身を隠しながら伺う。
恐る恐るベッドの方に視線を向けると…伶士はこっちには背を向けて横になったまま動いていなかった。
だが、その背中を花魁女郎蜘蛛が指でゆっくりとなぞる。
「ふふふ、愛しいのう…良い感じに魔力が溜まっておる。もう一息じゃ…」
さあ…どう出る?
好機は現れるか?
ヤツから目を離さず、息を潜めてその時を待つ。
…【傀儡】は、強い魅了催眠効果があるのだが。
術式効果が強いだけに、広範囲、広対象の催眠には適さない。
恐らく…対象と距離が離れていては、術式が作動しないのだ。
だから、花魁女郎蜘蛛は常に伶士の傍にいた。
蜘蛛の姿に身を変えて、肌に張り付いていても。
逆に言えば、平静を装い秘密裏に時間をかけて事を進めたかったのならば、なるべく距離を離して見守る。わざわざ姿を見せることなんてしないだろう。
なのに、目撃されるリスクを侵してでも、一緒に根城に入って行っちゃうか?普通。