俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
乗り込んだエレベーターが上階へと動く中、俺はまだ考えていた。
週末、何が起こったのか。なずなに何があったのか、知らなくてはならない。
もし、俺が連れていかれたことで、なずながあのような芋けんぴのような姿になってしまったのだとしたら。
…それは、俺のせいだ。
なずなは、俺のボディガード。
だから、俺の身に危機が迫れば、なずなは危険を顧みず、俺を救い出そうとする。
あの時のように、体を張ってでも…。
そんな思い出したくない苦い出来事を思い出すと、嫌な予感がますます思考を包む。
…だなんて、俺はもう心の奥底ではとっくに感付いているのだ。
週末、何があったか。
それは、俺の意に最もそぐわない事が起こったということを。
エレベーターがゆっくり停止して、扉が開く。
少し歩いて廊下に出ると、そこには右と左。玄関が二つ。
「左がなずぽんち、右が恐ろしい兄貴んちだ。…伶士殿は、そこで待っててくれい」
「あ…」
そう言って、川村は単身、左の玄関へと赴く。
俺が何を言う間もなく、インターホンを押してしまったのだった。