俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
「れ、伶士っ…!」
重なる視線にヤツは我に返ったのか、咄嗟にフードを深く被り直し、背を向けて退がろうとする。
変わり果てた姿を間近で改めて見ると、この上なく胸が痛むが、そこは怯んでいる場合ではない。
「おい、待て!」
「…んだよっ!…何でいるんだ!…むー、コラァァっ!」
この場から逃げようとするなずなを腕を掴んで引き留めると、ヤツは川村を矛先に一喝した。
だが、川村も反論する。
「このあほ!おまえの無鉄砲に心配して胸を痛めてるのは、もうわっちだけじゃない!それを覚えとけ!」
「くっ…!」
「下手に心配されたくなかったら、スマホの電源くらい入れとけ。連絡には返事しろ!」
「ちっ…」
言いたいことを力の限り吠えた川村は、息を切らしていた。
本音をぶつけられたなずなは、俺に腕を掴まれたまま、俯きながらも舌打ちする。
少しの沈黙が訪れた後、川村は深くため息をついた。
「…てなわけで。今日のところは帰る。…また連絡するから返信しろよ。伶士殿、後は頼む」
そう言って川村は踵を返して背を向ける。
なずなが「ごめん…」と呟くと、手を挙げてさっさと帰って行ったのであった。