俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
この場から立ち去る川村の背中を、無言で見送る。
ありがとう、なんて思いながら。
完全に見えなくなってから、玄関のドアを閉めて無理矢理室内に入り込んだ。
「…隠れてるなんて、趣味悪いわ」
なずなは顔を背けたままだ。フードを深く被り直している。
「…音信不通も趣味が悪いぞ」
「わかったから、離せ」
萎びたきゅうりの顔を余程見られたくないのか、俺の方を見ないまま腕をバッと振り払った。
が、勢いのせいで、なずなの体がグラッと揺れる。
「あっ」
咄嗟に手が出て、なずなの腕をまた掴んで引っ張る。
しかし、思った以上になずなが軽い。フラッとそのまま再び俺の腕の中に戻ってくる状態となった。
「だ、大丈夫か?」
「全然大丈夫じゃねえよ…ホントは立ってるのもやっとなんだって…」
今のなんてことない動作に、ヤツが息を切らしているのに気付いた。
この、萎びたきゅうり状態は、体力も激減してるのか?
意地っ張り負けず嫌いのくせに、否定もしない。
本当に…しんどいのか?
そう考えたら、少しでも歩かせるのは酷だと思い、その場でなずなの体を抱き上げてしまった。