俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~

『なのに、なずなちゃんはいつもおまえをまもることばっかかんがえて…おまえなんかなにもできないくせに!』



この苦しみが、罰なのか。



思考が、持っていかれる。

…あのホテルの屋上で、俺を庇ってなずなが倒れる場面や。

目の前で、なずなが黒い炎に包まれて燃やされる場面が、頭の中を巡って意識を離さない。

俺にとっては、直視出来ないぐらいこの上なく酷で信じたくなくて、二度と起こってはならないと、心に誓った出来事が。

俺の知らないところで起きていたなんて、予想を遥かに超えるもいいところだ。



なんてことだ…。



まさか、自分の式神が見えなくなるくらい霊力を失うとか、丸焦げになって回復しなかったら死んでいたところだったとか。

こんなリアルに命に関わることが起きたという事実を、想像したか?



…いや、想像は出来たはずなんだ。

それなりの覚悟を持って、俺はここに来たはずなんだ。

なのに…俺は『会いたい』『知りたい』気持ちが前に出ていたため、恥ずかしい話、そこまでの想像に至らなかった。

甘かったんだ、俺は。

甘かった…。



自分そのものに、愕然とさせられる。
< 368 / 541 >

この作品をシェア

pagetop