俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~


しかし『伶士のくせに』か…。



またまた何だか嬉しくなってしまった。

罵倒されたはずなんですけど。



それからというもの、食事していても、風呂に入っても、さっきの一連のやり取りを思い出すと、ニヤケてしまう。

記憶のなかった週末をも含めて、久々のいつものやり取りを味わったことに喜びを隠せない。

…俺、罵倒されて喜んでるんじゃないんですよ。

元気も体内の水分も無くなっていたなずなが、いつもの調子を見せたことが嬉しいのですよ。



そんな一抹の幸せを感じて、調子に乗る。



…もっと、一緒にいよう。



「なずな、一緒にテレビ見よう」

「……」



自分ののむヨとなずなのレモン水を片手に、なずなの部屋に押し掛ける。

しかし、ヤツは俺の来訪に気付いた途端、無言で再び布団の中へと潜り込んだ。

もぞもぞと布団の中で動きはあるが、返事はない。



「…まだ怒ってんの?」

「……」

「ねえ」

「……」



話しかけても、うんともすんとも返事なし。

シカト攻撃?弱ったぞ、こりゃ。



…とは、思わない。

シカトをするならば、それはそれで対抗する術はある。
< 435 / 541 >

この作品をシェア

pagetop