俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
「…なずな」
愛おしいその名を、なんとなく呟いた。
起こそうとしたわけじゃない。ただ、その名を口にしたかった。
だが、俺の小さな呟きは眠っているなずなには届かず。
何の反応もなく、すやすやと眠り続けている。
やつれて顔貌が変わっていようが、その寝顔は愛くるしいもので。
想いが込み上げると、顔を近付けていた。
額をそっと合わせて、フードの上から小さな頭を撫でる。
夢の中で蟲の知らせで感づいたこともあり、寝息を感じては、改めてその決意を固めていた。
(絶対に…)
起こさないよう、そっと布団を出て部屋を後にした。
「嫁入り前の女性の部屋で一夜を明かすのは、どうかと思いますが」
試合、部活も終わり、夕方。
迎えの車に乗り込んだ早々、忠晴から厳しいお言葉をかけられる。
バレちゃってた…。
「…ただ、添い寝してただけだよ」
「内容はさておき、婦人の部屋で一夜を明かすことが問題なのです。紳士として、距離感はマナーですよ」
「今時そんなのあるかよ…」