俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
『退かない。私だって、戦えるのよ?』
…俺が生まれる前に亡くなってしまった、一度もお会いしたことがない、曾御祖母様。
俺と母さんのそっくりさん。
橘美頼だ。
『記憶』の中の彼女は、動けなくなった手負いの護衛の女性を背に庇い、刺客と対峙するというシーンがあった。
その手には、まるで陽炎のように揺らめく、白く透き通った炎を纏う。散りばめられた火の粉が、キラキラと銀色に輝いていた。
彼女が、その手に纏った炎ーーそれが、恐らく『術者のような力』だ。
(俺にも、あれが使えれば…)
…使えるよ?
そう囁いてきたのは、あの儚い彼。先代の【夢殿】だった。
(本当に出来んの…)
いとも簡単な返答に半信半疑でいると、また彼の声が頭に響く。
出来る…出来るよ?
さあ、僕の言う通りにして…
「こうなれば…ここで畳み掛けてくれる!……うおおぉぉっ!」
黒曜鬼の咆哮で、ハッと我に返った。
声をあげているといくらか勢いがつくのか、彼は言葉の通り、結界を伴ってズカズカと踏み込んでくる。