俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
気付けば、黒曜鬼の高揚しきってギラギラとした瞳が至近距離にあった。
威圧されそうになるけど、跳ね除けるように奥歯を噛んで睨み返す。
そう、距離を詰めて…
それで、いいんだ…
頭の中の囁きの言う通り、こっちも負けじと足をギリッと踏み込む。
結界と結界の摩擦音だけではなく、俺が更に接近することで、反発し合っていた圧力が凝縮されてしまい、今にも爆発しそうだ。
俺たち、互いの体もくっつきそう。
本当にいいの?
手を伸ばして…
(…はっ)
だけど、その一言で、彼の言いたいことが瞬時にわかってしまった。
なんとも便利な伝達機能だ。
そうだ。
手を伸ばせ。…結界の外へと。
…手に、【陽炎】を纏わせて。
右手を上げて掲げる。
言われた通りのイメージを念じると、徐々に熱を帯びてきて。
やがて、幻想的に揺らめく、白く透けた炎へと姿を現す。
「なっ…何だそれは!」
俺のただならぬ状態の右手を目にしたのか、黒曜鬼が狼狽した声をあげる。
だがその時、ほんの一瞬だけ、迫る圧の波が途切れたような気がした。
(今だ…!)