俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~

気付けば、黒曜鬼の高揚しきってギラギラとした瞳が至近距離にあった。

威圧されそうになるけど、跳ね除けるように奥歯を噛んで睨み返す。



そう、距離を詰めて…

それで、いいんだ…



頭の中の囁きの言う通り、こっちも負けじと足をギリッと踏み込む。

結界と結界の摩擦音だけではなく、俺が更に接近することで、反発し合っていた圧力が凝縮されてしまい、今にも爆発しそうだ。

俺たち、互いの体もくっつきそう。

本当にいいの?




手を伸ばして…




(…はっ)



だけど、その一言で、彼の言いたいことが瞬時にわかってしまった。

なんとも便利な伝達機能だ。



そうだ。

手を伸ばせ。…結界の外へと。

…手に、【陽炎】を纏わせて。



右手を上げて掲げる。

言われた通りのイメージを念じると、徐々に熱を帯びてきて。

やがて、幻想的に揺らめく、白く透けた炎へと姿を現す。



「なっ…何だそれは!」



俺のただならぬ状態の右手を目にしたのか、黒曜鬼が狼狽した声をあげる。

だがその時、ほんの一瞬だけ、迫る圧の波が途切れたような気がした。



(今だ…!)
< 488 / 541 >

この作品をシェア

pagetop