俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
黒曜鬼の一段と悲痛な雄叫びが響くと同時に、柱状となっていた白い炎もドンッ!と膨れ上がる。
爆発したように思えたが、俺自身は爆風に少し煽られたのみで、吹っ飛ばされることなく。
目の前には、白い炎に包まれてメラメラと焼き尽くされた、ただの火だるまがあった。
しばらくすると、もううめき声すらも聞こえてこなくなった。
ただの火だるまを茫然と眺める。
…これはまだ、俺の選んだ道の始まりに過ぎない。
今後、こういうことが何度も降りかかってくるんだろう。妖怪にしろ、魔族にしろ、人間にしろ。
でも、後悔はしていない。
自分のために、誰か大切な人が傷付く。
それを何も出来ないでただ見ているしかないよりは、断然マシだ。
だから、これからも俺はずっと。
想像を越えていくんだ。
(絶対に…やってみせる)
火だるまは、白い炎が消え去って鎮火すると共に、カタチを失っていた。
黒曜鬼自身も、もう跡形もない。
地面には…漆器のように落ち着いた輝きを見せている、拳大の漆黒の宝石のみが残されていた。