俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
……そうして、【夢殿】頼愛の護衛は始まる。
彼、赤也は頼愛と衣食住を共にするとか、傍に張り付いて護衛をするわけではなく、頼愛の日常生活、目の前にはほとんど現れない。
普段は身を潜めて陰ながらその御身を護る。まるで隠密のように。
だが、頼愛は持ち前の鋭い勘で、赤也の存在に気付いてしまうものだ。
生活の隙間の、顔を合わせるほんの一瞬の時間に、二人は決して長くはない会話を交わす。
本日の天気の話や、互いの体調を案じる声掛け。
今宵は月が綺麗だとか、庭に咲いた花が綺麗だから見てきて欲しいとか。
差し障りのない短い会話のみの関係だったが…言葉を多く交わさなくても、二人の間には、少しずつ積み重ねられた絆があった。
だが、一方。
新しい【夢殿】の出現を知る者による争奪戦も少しずつ明るみになっていく。
頼愛を自分の組織へと招致するため、あることないこと都合の良い話を持ち掛けて説得を試みる者もいれば。
…頼愛を強引に誘拐し、無理矢理自分らの手中に収めようとする者もいた。
そして、頼愛の【夢殿】の力が覚醒する間もなく、その争奪戦は激化する。