俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
…そうだ。
現時点でここには、なずなのような陰陽師や神童だの術者の類は一人もいない。
ここにいるのは、カウンターにいる咲哉さん、奥の部屋にいるオーナー、美奈人、赤ちゃん…みんな、ただの一般人。
目の前の黒い翼の彼の笑みが、俺を視界に捉えて離さない。
それは、無言で何かを俺に警告しているようで。
…もし、ここで下手に騒いでしまうと。
関係のない人たちも巻き込んでしまうのではないか?
今までの彼との出来事を振り返る。
生き霊を操って自分を襲わせた件、北桜学園の件。
そして、記憶に新しいのが、オガサワラリゾートの件。
関係ない一般人を巻き込むのは、彼の十八番といっても過言ではない。
…ひょっとして、俺の軽率な行動ひとつで。
何の関係もない人たちの身の安全が…!
「伶士くん?」
「…あ、そうです。ち、ちょっと近くまで来てるっていうから…あ、向こうの席借りてもいいですか?」
…そう瞬時に悟ると、彼の下手な芝居に付き合うしかなかった。