俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
念押しの一言を小声で囁いた後、彼の顔は俺から離れる。
その脅迫に背筋を凍らせ、顔を上げられないままでいた。
「あ、すみません。もう出ますんで…」
彼の取って繕った高目の声が聞こえると、傍にオーナーの気配を感じ、足元の小綺麗なスニーカーが視界に入る。
…関係ない人を巻き込むわけには、いかない。
なんとかやり過ごそうと緊張のせいか、何故か息を止めてしまった。
テーブルにコーヒーを置いたのか、カチャンと食器の音が聞こえる。
罪のない人を巻き込むわけにはいかないんだ。
早く。早く向こうに行ってくれ…。
そう念じてはいるものの、彼女の足はなかなか動かない。
そして、もう一度。
カチャンと音が聞こえた。
「…あなた、うちの常連さんに何してくださいますの?」