アンコールだとかクソ喰らえ!
病院の駐車場に、車。
病院によるだろうけれど、私が入院していたあの病院は確か、有料だったはず。
待って。いや本当に。
「……戸山?」
病院からここまで、バスで二十分。当然だが、バスに乗る前から車は停めてあっただろうから、今すぐバスが来て病院に帰れたとしても、単純計算でだいたい一時間くらい。
二十分単位か、三十分単位か、はたまた一時間単位か。知らないし、料金を見てないからこそ、発生しているであろうそれを想像するのが恐ろしかった。
「ばっ! あんた! さっさと車取りに行きなよ!」
「戸山を送ったら行く」
「私はいいから! あと五分くらいしたらまたバスく」
「戸山を、送ったら、行く」
「っな、」
「……駐車料金、気にしてくれてんなら、早く帰ろ」
「……」
「な?」
だというのに、車の持ち主である来栖は、ひどく落ち着いた様子で、声で、そして表情で、私を諭す。
何だ、それ。まるで、私が駄々をこねているみたいじゃないか。
目を覚ました日、検査の日、そして退院の日と、日ごとに低くなっていった沸点のせいで怒鳴りそうになったのを寸でのところで、ぐっと堪える。
「……分かった」
その代わりに吐き出した言葉は、馬鹿みたいに小さかった。