アンコールだとかクソ喰らえ!
好きじゃなくてもいい。
高校一年の冬、同じクラスの彼に向けて、必死のあまり吐き出したその言葉に嘘はなかった。けれども、人間とは、欲をかかずにはいられない生き物だ。
好きじゃなくてもいい。でも、好きにはなって欲しい。
たったの一度でも、それを思えば、何とか保っていた均衡はあっさりと崩れてしまうのだろう。
最初は気にならなかった距離感が、気になって堪らなくなった。スキンシップはいつも私からだった。
メッセージも、電話も、私から。メッセージの返事は文末に【?】がついていたらしてくれる程度だった。
デートに誘えば応えてくれるけれど、楽しそうにしていたことは一度もなかった。早く帰りたい。終始顔にはそう書いてあったし、友達からの誘いが重なって、先に約束したからと私との約束を優先したときには特にそれが顕著に現れていた。
一方通行なのは分かっていた。けれど、期待もしていた。頑張れば、好きになってもらえるかもしれない、と。もちろんそんな期待は、三年に上がる前の春休み中に、自宅の庭に埋めた。
お互い、進路は進学だった。受験。それを理由にしたくはなかったけれど、約束をして会う回数はめっきり減っていったし、最後の方はもう、廊下で見かけることがあるくらいになっていた。
とはいえ、自然消滅なんて中途半端で気持ち悪いことはしたくなかった。
だから、決めた。
卒業の日に、私も、彼から卒業をしよう、と。