アンコールだとかクソ喰らえ!

 お酒を(たしな)まない理由は、細かく言えばたくさんあるけれど、大まかに言えば、ふたつ。下戸(げこ)であることと、お酒に限らず炭酸系が苦手だということだ。
 仕事の付き合いで飲むことだってもちろんあるけれど、お酒を口にするのはいつも最初の一杯だけだ。二杯以上飲むと確実に酔うし、眠くなってしまう体質なのも把握しているから。

「…………え、」

 だから、いくら美味しいからって、二杯目、ましてや、三杯目、四杯目、なんてやめておけばよかったんだ。

「…………え……?」

 なんて思っても、後の祭り。

「…………え……?」

 ずきりと唸りをあげた鈍い痛みに意識が浮上した。
 かと思えば、視界いっぱいに広がる肌の色。若干の熱と、息苦しさ。そして背中にある、何かが巻き付いているかのような感触と、頭上からこぼれ落ちてきた「……ん、」とやけに艶っぽい吐息。

「…………え……?」

 ドッ、と一際大きく心臓が跳ねた。
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