アンコールだとかクソ喰らえ!

 何となく、感触やら何やらで予想はついていたけれど、実際に視認してしまうと、何も身に付けずベッドの中にいるという事実はなかなかにダメージがでかい。
 もそり、もぞり。何かの幼虫よろしく身体をうねらせて、仰け反ることを阻んでいたものからの離脱を試みる。

「…………ん、」
「っ!」

 やめて。お願いだから、起きないで。
 心の中で念じながら、少しずつ、少しずつ、身体をずらした。

「…………う、わ、」

 知恵の輪は、わりと得意だった。
 そのお陰かどうかは知らないけれど、離脱に成功。さすればお次は衣服だと、足を床に付けて辺りを見回して見たものの、何もなかった。
 否、正確には、衣服の(たぐ)いは何も、だ。
 床にふたつ落ちている、アルミっぽい素材の正方形のパッケージ。開封されているそれを、「これ何?」ととぼけるほど子供ではない。とはいえ、目の当たりにしたこの光景を飲み込み、すんなりと受け入れるほど大人でもないが。
 はて、参った。どうしたものかな。
 真っ裸のまま床にしゃがみ込んで、うううん、と唸る。すると、それに応えるかのように背後で、ごうん、ごうん、と低くて鈍い機械音が聞こえてきた。

「…………ま、じか、」

 ごうん?
 振り替えって、視線の先で扉を捉えて、またしても気付く。

「…………逆に生々しい、」

 眼前に広がる光景は全く知らない、しかしやけに生活感のある、空間だった。
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