アンコールだとかクソ喰らえ!

 どうしよう。
 なんて、思ったところで、優先してすべきことは揺るがない。
 ごうん、ごうん、と未だ鳴りやまないその音は、おそらく洗濯機、もしくは、乾燥機の音だろう。家事をしていればその音はひどく馴染み深いものだ。できるならば、乾燥機の音であって欲しい。
 いざ……!
 真っ裸を脱却すべく、覚悟を決め、目を覚ます様子のない来栖の足元でくしゃりとよれているタオルケットっぽいものをゆっくりと引っ張り、そこから抜く。それをくるくると身体に巻き付けて、ちらりとベッドを一瞥してから扉へと手を伸ばした。

「……やっちまってんな」

 扉の向こう側は、廊下だった。
 私のバックとその中身が散らばっている。パンプスも転がってる。そうなった理由は考えたくないので考えないでおこうと思う。
 歩いて、バックを拾って、歩いて、携帯を拾って、また歩いて。少しずつ、けれども確実に音のする方へと近付きながら廊下に落ちているものを拾い集めていれば、ピーッ、と甲高い音が響いた。

「……よかった」

 パンプス片手に音のしたであろう場所の扉をそろそろと開けば、空っぽの洗濯機と止まったばかりであろう乾燥機。勝手に漁るのは気がすすまないけれど、真っ裸でいるよりはマシだと乾燥機に手を突っ込んだ。
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