アンコールだとかクソ喰らえ!
どうやら私は、病院のベッドにいるらしい。
そのことを脳みそが認識したのは、ピ、ピ、ピ、と、一定で刻まれているそれを聞きながら、「左側頭部と左肩を強く打っている」と医師に聞かされたときだった。
ああ、事故ったのか、と。
「っい!」
「心咲!?」
「い、たい、頭、」
歩いてた、おばあちゃんは?
それがまず頭に浮かんで、しかしそれを言葉にする前に、ずきりと激しい痛みがこめかみを襲った。
ずきり、ぐにゃり。痛みに伴って視界が歪む。心なしか胃も気持ち悪い。
「明日、体調が大丈夫なようでしたら検査をしましよう。今日は安静にしていてください」
そう言って、病室から出て行く医師の背中に、深々とお辞儀をする母の姿も、やっぱり歪んでいた。
「……心咲、寝れそうなら、寝てなさい」
「……ん、ごめ、ん、ね……お母さん」
「いいのよ、いいの……目覚めてくれたんだもの」
「……え、」
改めて顔を合わせた母の、今にも泣きそうな顔なその目にはうっすらと隈が見える。
「あなた、二週間も意識不明だったのよ」
二週間。
決して短くはないそれを言葉にしようとして、けれどできなくて、はくりと唇が動いただけ。
ごめん、ごめんね。いっぱい、心配かけちゃったんだよね。
言いたいのに、声がでない。徐々に忍び寄ってきた睡魔のせいで、何ひとつ伝えられないもどかしさを感じながら、そっとまぶたを閉じた。