身代わりでも傍にいたかった
バレンタインデーのあの日から翔は家に来なくなった。
同じ大学に通っているのに忙しいと言って殆ど会うことも無かった。
多分、二人でデートしているんだ・・
二人で抱き合っているんだ。
その姿を想像して叫びたくなるほど心が千切れそうだった。
私はひたすら家の整理をした。
そんなある3月の初めフラっと翔が訪ねてきた。
翔は「ゴメンね忙しくてなかなか真央と会えなくて」
とヘラと笑顔で言う。
翔、そんな嘘付かなくても良いんだよ。
夏海が颯真とスキーに行っているのを知っている。
だから来たんだよね・・
その夜も翔は私を意識が無くなるまで何度も何度も抱き潰した。
私の身体中に痛いくらい赤い花びらを落とした。
そして私の中で果てる直前に「愛してる」と言った。
私には死刑宣告だった。「愛してる」(夏海)ってそう言いたかったんだよね翔。
もう少し待ってね。
そう思いながら意識を手放した。
途中目覚めた私はその日が最後の夜だと悟っていたからシャワーも浴びず、
ソファーで寝る事も止めて翔の腕の中で久しぶりに朝まで眠った。
この匂いも、この大きな手も忘れない。
と思いながら一人で声を殺して泣いた。