身代わりでも傍にいたかった

卒業式の日は私の両親も出席していて翔と二人で話す機会は幸運な事に無かった。

何か言いたそうな翔と何回も目が合った。

何が言いたいかは解っている。
学校を卒業するのと同時に私とも終わらせたいのだと・・

でも、せめてこの身体についている赤い花びらが全て消えて無くなるまでは
彼女で居させて欲しかった。

翔には実家にズーと居るような言い方をしたが
実際は卒業式後に両親と一緒に帰省し家族旅行をして卒業式の四日後には戻っていた。
実家に帰っていると思っている翔はフラっと私の部屋に来ることは無い・・

4月まで私が引っ越しをした事を知られたくなかった。

新しい部屋は就職先から電車で3駅。
今までとは違い7畳しかない1K。
ただ部屋は狭いが仕事柄クローゼットが広い物件だった。

思い出のあるベッドも全て処分した。
今、部屋にあるのは小さなテーブルと簡易ソファーベッドだけ。

そして翔の荷物を詰めた段ボールが一箱。

私は翔に手紙を書きそれを段ボールの中に入れ、4月1日必着で発送手続きをした。

これで終わり。

あっけなかった・・
大丈夫と口に出した瞬間に嗚咽が漏れた。
あと少し、もう少しだけ泣かせて。
4月になったら忘れるから・・もう、身体には花びらは一枚も残っていなかった。
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