身代わりでも傍にいたかった

私は起こさないようにそっとベッドから抜け出し
椅子に掛けている着古したYシャツに袖を通す。

フッと香る匂いを堪能したくて腕を自分の首に回して腕の匂いを嗅ぐ・・
隣で寝ていた彼のシャツじゃない。

それはこの間実家に帰った時に兄が派手でもう着ないと捨てようとしたシャツ

兄が恋しくて嗅いだのじゃない。
そのシャツには実家の匂いがして
心が弱っている今、その香りに包まれて安心したかっただけ・・

私はシャワーを浴びながら体中をゴシゴシ赤くなるまでこする。
そして何分もかけてそれをシャワーで洗い流す。
大好きな彼に抱かれたのに
その後にしている私のこの行為は嫌いな男に抱かれた時にする行為と同じだ。

私の身体についている彼の想いを洗い流している。
< 2 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop