身代わりでも傍にいたかった
三年生になったあの日、私は高校時代の友達と居酒屋で久しぶりに会っていた。
その日は翔も友達と会うと話していた・・よもや同じ居酒屋に居合せるとは思わなかった。
今でこそ私は「真央」と呼ばれているけど当時の私のあだ名は「マーちゃん」だった。
その襖だけで仕切られている隣に翔が居るとは思わなかった。
その日は友達の彼の浮気相談。
恋愛経験値の低い私は聞く専門に徹していた。
一瞬、こっちの会話が途切れた瞬間に隣の部屋の声が入った
「翔は相変わらず夏海一筋な訳?いい加減吹っ切って彼女作れよ。夏海と颯真は別れないぜ」
「うるせ~よ」(うるせ~よ)
と言った声は間違いなく私の彼氏の翔の声だ・・
間違えるわけない私の大好きなテノールの声。
それに(夏海)と(颯真)って・・翔は夏海が好き・・解っていた。
だって翔が夏海に向ける笑顔は極上の笑顔だった。
私には絶対に見せない眩しい笑顔。
「夏海」って呼ぶ声も違っていた。