やさしいベッドで半分死にたい【完】
明日も、一緒にいられるんですか。
聞いてしまったら何かが終わってしまいそうで、口を噤み続けている。いつまでこんなにも、やさしすぎる夢を続けていられるのだろう。
「花岡さんのお好きな映画、選んでくださいね」
「ホラーとか?」
「えっ?」
「学校ものなんか、どうだ」
「もうすでに、すこしこわいんですけど」
仮初の平穏を崩したくなくて、何一つ口に出せないまま、花岡が握ってくれた指先に絡む。
「嘘だ。前に観たいって言ってたやつあっただろう」
「ええ? なんだろう……、花岡さんは記憶力が良すぎて」
真剣に考えていれば、花岡が、隠すように囁いた。
「(全部、いつか叶えてやりたかっただけだ)」
どんなに素敵な言葉だっただろう。
この耳が、治ってくれたらいいと思ってしまった。けれど、治ったらこの夢の世界にはいられないだろうから、矛盾している。
解放してあげたいと思うくせに、ずっとしがみ付いていたかった。
もう少し、花岡のやさしさに縋っていてもいいのだろうか。
「あ、思い出しました! 洋画ですよね? サイエンスミステリーの……」
恋人みたいに指先が繋ぎ合わされる。奇跡のような夜に心底感謝して、彼の頬を見つめていた。
あなたのしあわせが、私のしあわせだと思えたら、どれだけ良いだろうか。
そうなればいいのに。