やさしいベッドで半分死にたい【完】
花岡の行動の理由は大体想像の域を飛び越えてしまっているから、私の幼稚な思考回路では処理しきれない。
いつも、花岡の行動の理由には、私にとっての、細やかな初めてが含まれている。どうしてそんなにも、鮮明に覚えていられるのだろう。
彼がくれるもののすべてに気づいて、最大限の感謝を述べてしまいたいけれど、きっともうすでに私が気づけていないはじめての体験が、無数に組み込まれている。
そんな気がしてやまなかった。
ふらりとスーパーに入って、買い物かごを取ることなくまっすぐに進んでいく。こぢんまりとした店内は生鮮食品を取り扱っているためか、秋風に晒された体にはすこしつめたく感ぜられる。
我が家のようにまっすぐ歩く花岡が立ち止まって、私の顔を見下ろした。
「どれにする」
「……アイスクリームですか?」
「海と言えば氷菓じゃないのか」
「もしかして、私が言ったんですか」
過去の私が自分の発言に、まったく責任を持っていないような気がして苦笑してしまう。
問うてみれば、花岡はとくに答えることなく耳元で笑い声を立てていた。私が耳元で笑わないでほしいと訴えてから、花岡の細やかな趣味になりつつある。
からかっているだろう人から一歩離れて、目の前に積まれている、バニラをビスケットで挟んだアイスクリームを手に取った。
いつも、花岡の行動の理由には、私にとっての、細やかな初めてが含まれている。どうしてそんなにも、鮮明に覚えていられるのだろう。
彼がくれるもののすべてに気づいて、最大限の感謝を述べてしまいたいけれど、きっともうすでに私が気づけていないはじめての体験が、無数に組み込まれている。
そんな気がしてやまなかった。
ふらりとスーパーに入って、買い物かごを取ることなくまっすぐに進んでいく。こぢんまりとした店内は生鮮食品を取り扱っているためか、秋風に晒された体にはすこしつめたく感ぜられる。
我が家のようにまっすぐ歩く花岡が立ち止まって、私の顔を見下ろした。
「どれにする」
「……アイスクリームですか?」
「海と言えば氷菓じゃないのか」
「もしかして、私が言ったんですか」
過去の私が自分の発言に、まったく責任を持っていないような気がして苦笑してしまう。
問うてみれば、花岡はとくに答えることなく耳元で笑い声を立てていた。私が耳元で笑わないでほしいと訴えてから、花岡の細やかな趣味になりつつある。
からかっているだろう人から一歩離れて、目の前に積まれている、バニラをビスケットで挟んだアイスクリームを手に取った。