やさしいベッドで半分死にたい【完】
とうとう、会話の内容まで聞こえるようになってしまったのか、それともこの場が静かすぎるのか、よくわからない。わからないのに、花岡が誰と会話しているのかということだけ、はっきりと理解してしまった。
花岡南朋の双子の弟は、眞緒という、よく似た名前を付けられていると聞いていた。
花岡は、すこし困ったような顔をしながら私の指先をしっかりと繋ぎ合わせて、注意を引くように力を込めた。
「チケットをもらった? はあ、そうか」
絡んだ視線の先に、花岡のまっすぐな瞳が光る。何か困ったことを言われてしまっているらしい。何かしらのチケットを譲られているのだろうか。
そこまで考えて、ふいに思い当たる。花岡は、弟と好きな音楽の趣味もすこし似ているのだと言っていた。
「ライブにはまあ、行く気はあるんだが……」
私がここにいるから、花岡は、すきなところへも行けないのではないだろうか。
私が邪魔になってしまっているから、花岡は困惑した面持ちを浮かべているのか。一つの結論に思い至って、たまらず掴んでいる指先を引く。
私は、花岡の荷物のように、寄りかかって生きる道を進みたいのだろうか。
「どうしたんですか」