やさしいベッドで半分死にたい【完】

『お前に居場所なんてない』

「ちがう、そんなこと、花岡さんは言わない」

『都合の良いことばかりを見つめてどうする? 現実はどうした? 放り出した仕事はどうする? 俺の責任にするのか』

「やめてください、お願いします、やめて!」


懇願するように、夢のうちで叫んでいる。


誰か助けてほしい。誰かここから逃げ出す術を作ってほしい。

どこかに帰り着きたい。誰かに抱きしめられたい。自分ではない誰かの人生を歩みたい。 


『無理だ。お前にはできない』


けれど、どれも無理だ。

わかっているから、どうしようもなく恐ろしい。明日終わりが来るかもしれない。明日現実が追いついてしまうかもしれない。

明日、花岡が誰かに糾弾されてしまうかもしれない。誰かが私の存在に気づいて、指を差してしまうかもしれない。

居場所などない。すべてがなくなってしまった。


『本当はもう、聴こえているんだろ?』


才能はない。元からなかったのかもしれない。結局、すべてが壊れてしまった。私が私である価値など、とうに奪われた。今はただ、私という過去の栄光が罵って、囁きかけるだけだ。

どこへも行けない。必死になっても、報われることもない。頑張りたくない。もう無理だ。

何が良いのか何が悪いのか、何がすきで何を感じて、どうして生きていけるのか、私には、わからない。


もう、私は、嘘でも良いから、花岡のやさしい腕の中で、微睡みながら終わってしまいたい。



「――っあまね!」


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