やさしいベッドで半分死にたい【完】
寄りかかってはいけないとわかっているのに、力が抜けてしまった。頬に張り付いた涙の痕を愛するように指先でなぞる。目が合って、なぜかもう一度涙がこぼれてしまった。
ふがいなさも遣る瀬無さも、愛おしさも喜びも、何もかもがぐちゃぐちゃになって、背中でほどける。
助けてほしいと手を伸ばすとき、きっと私の脳裏に浮かんでいるのは、いつも同じ人だ。
「花岡さん」
好きだ。
どうしようもなく情けない女が一人、声を潰した。きっと、伝えてしまったら、花岡は全力で私を守ろうとする。
そばにいたい。ずっと隣に縋りついていたい。
心では、ずっとそれだけを望んで仕方がないのに、どこかで誰かが叫んでいる。このひとを、このやさしいひとを、私ごときが縛り付けてはいけない。いつも二つの自分に引きちぎられてしまいそうだ。
耐えられなくて、まとまらないまま花岡の背中に腕を回した。きっとひどく濡れているから、不快だろう。
私みたいな人間が縋りついていいような人じゃない。たくさんの触れてはならない理由が浮かぶのに、何一つ実行できなかった。
「藤堂周でいることが、もう、怖いんです」
独り歩きする名前の重みに耐えられなくなったのは、いつからだったのだろう。