やさしいベッドで半分死にたい【完】
「お前のしたいことだけ、してればいい」
どこまでもやさしいひとが、囁いた。夜に隠すように告げて、私の体をベッドに横たわらせてくれる。頬に張り付いた髪を撫でて、綺麗に整えた。
「したいこと、何かあるか」
あまく痺れてしまいそうなこころに、花岡の声が滞留する。何度も反芻して、精いっぱいのわがままを口遊んだ。
「朝まで……、一緒に、いてくれませんか」
そうしたら、きっと明日には克服して見せる。笑って、何でもなかったみたいに、元気になって、花岡の手を放す方法を考える。
私にはもったいない人だ。
こんな夜更けに、心配して抱きしめに来てくれるひとなんて、きっと花岡だけだろう。花岡は私のどの部分を愛してくれているのだろう。わかっていたら、きっとその部分だけを残して、あとは違う人間になれるのに。
「言われなくてもそうする。何なら、隣で眠っていてやろうか」
細やかに笑った人が、耳元に囁き落とした。冗談めかして言うけれど、本当にそうして欲しくて小さくうなずいてしまった。
その腕の中に帰りたい。ばかみたいなことを思ってしまった。目を見張った花岡が、しばらく黙り込んでから、ベッドのわきに寝転ぶ。
すぐ隣に、花岡の真剣そうな瞳が見える。
吸い込まれてしまいそうだ。思う間にやさしく頬に触れられる。