やさしいベッドで半分死にたい【完】
かなわぬあいは、ほしくずみたいに
目覚めて一番に見るのが、愛おしい人の安らかな瞼であるなら、どんな一日もうつくしく彩られるのだろうか。
おぼろげに見える視界の真ん中で、静かに寝息を立てている。
穏やかな寝顔を見つめて、ようやく真夜中の花岡のやさしさを思い返した。ずっと抱きしめていてくれたのだろう。もしかすると、私が眠ってからもしばらく眠れなかったのかもしれない。
起き上がりたいけれど、花岡の腕が体にしっかりと巻きついている。まるで、すこしでも動いたら、気づいてしまいそうだ。きっとそうするつもりだったのだろう。
夢は見なかった。
何かあたたかいものに包まれる幸福のような、あたたかな眠りだったように思う。それが、花岡が作り出してくれたやさしさなのだと理解して、一人で納得している。
花岡の腕に抱かれてしまうと、きっとどんな人でも心穏やかになってしまうだろう。そんな気がしてやまない。
どんなことからも守ってくれそうなつよさがある。どんなおそろしいものからも助けてくれそうなやさしさがある。
マネージャーとしてそばにいてくれた時、花岡はいつも気難しそうな顔をしていたのに、眠る彼は少年のようだ。
あどけない瞼に触れてみたくなる。その瞳で見つめてほしいような、このままずっと見つめていたいような、複雑な感慨が胸に疼いている。