やさしいベッドで半分死にたい【完】
アンバランスな魅力の前で、何度でも眩暈がしてしまいそうだ。私が呼べば、花岡の目がやさしく細められた。


「怖い夢、見なかったか」

「そうですね。南朋さんが、抱きしめていてくれたからですね。あたたかくて……、たぶん、とてもやさしい夢を見ていたのだと思います」

「そうか。じゃあ毎日抱いて寝てやろうか」

「ええ? それは悪いです」

「あ?」


茶化すような声で、私の頬を撫でる。

まぶしい朝日が差し込んだ部屋で、花岡の作った顰め面に笑っていた。やさしい匂いがする。花岡の匂いが、安定剤のように心を落ち着かせてくれる。

離れなければならないとわかっているのに、どうしてこんなにも離れがたいのだろう。


「南朋さん断ちしないと」

「はあ?」


そのやさしさに、ずっと縋ってしまいたくなる。

今日だけと決めていた。自分に言い聞かせるように笑って、隠すように花岡の匂いを胸いっぱいに抱きしめた。


「たぶん、もう大丈夫です」


確証なんてないくせに、自信満々に囁いて見せた。花岡がすこしむっとして私を見つめている。

やさしい人だな。ひかりのような強い人だ。まぶしくて、この恋い焦がれて、どうしても、手放したくなくなってしまう。


「お前の大丈夫は信頼ならないな」

「ええ?」

「いつも無理する」

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